アジアの布の味わいかた

タイの刺繍

「刺繍の仕事でお金が貰えるのはうれしいよ。」

タイ北部の都市チェンライから車で3~4時間の山間に小さなヤオ族の村が点在しています。
その村の一軒の家を訪ねると軒先で一人のヤオ族のおばあさんが目を細めながら刺繍をしていました。
庭では鶏がヒヨコを連れて歩き回り、犬がのんびり寝そべり、子猫がじゃれ合っています。
おばあさんは「メガネがほしいな~」と手を止めることなく笑いながら言いました。
次々に布に針を運んで模様が出来上がっていきます。
「私はもう畑に出ることが出来ないけどこうやって刺繍の仕事をして
お金が貰えるのはうれしいよ。何より刺繍するのが大好きだからね。」

タイの少数民族の暮らしは?

photoタイの少数民族の人たちは古くは中国から焼き畑農業をしながら移住を繰り返してタイに来た人たちです。ヤオ族、モン族、アカ族・・・たくさんの少数民族の人たちはタイだけでなくベトナム、ラオス、ミャンマー等の山岳部にたどり着き、今では焼き畑農業をやめて小さな村を作り定住していますが、その生活はどこの国でも苦しいのが現状です。

布を見ればどの少数民族が作ったものかすぐわかります。

少数民族の人たちはそれぞれの民族で昔から受け継がれて来た手工芸品の技を持っています。織物であったり刺繍であったり染物であったり、模様だけでなく使う色も全く違います。布を見ればどこの種族なのかすぐ分かります。

ヤオ族の布の伝統的な手法

photoヤオ族はクロスステッチの刺繍を先祖から受け継いできました。スカートや上着に細かなクロスステッチが施されて見事です。その一つ一つに図案があるわけでなく頭の中に組み込まれている模様です。布を手に取ると印も付けずに外枠を糸で形どりそれから思いつくままの色で刺繍していきます。特にヤオ族の刺繍は色の組み合わせ、模様等どれ一つ同じものがなく製品に仕立てると世界に他がないオリジナル品になります。ただ地味で細かい仕事の割には工賃が安く若い人には人気がありません。廃れそうになっていましたが、今、少しづつ見直されて祖母から、母から娘へと技術が伝承されています。AWEPはこのヤオ族の刺繍を使ったバーントーファングループの製品を取り扱ってヤオ族の伝統的な刺繍の存続も応援しています。

モン族もクロスステッチを使いますが、リボンやプリント地を縫い付けたりヤオ族とは全く違った雰囲気の布です。

想像をかきたててくれるアジア少数民族の布

またインド北西部やミャンマーに住むナガ族の刺繍は動物や人を表したものです。
どのような場面で使われたのか、刺繍で描かれた村の生活の様子や動物たちが想像の世界を楽しく広げてくれます。

ここに挙げたのはごく一部の少数民族の布ですが、其々の少数民族の伝統文化である布は衣服として使われたり祭事の為に使われたり・・・。本当は大切に守られるべきものが、最近では古着として売られて切り刻まれて袋物や衣服に作り替えられて土産物屋の店先に並んでいます。世界各国で伝統手工芸品が廃れていく中、手仕事のものに触れて感じる温もり、見とれてしまう様な素晴らしさに接する度にこの技を廃れさせたくないなという思いが強くなります。

ヤオ族の村では今日もあのおばあさんが一針、一針慈しむように刺繍の針を進めているでしょうか。