奄美専門チャンネル~南の風 2018年6月番組


2018年6月の放送内容。奄美専門チャンネル担当 大橋愛由等レポート。
ちょうどNHK大河ドラマ「西郷(せご)どん」で、奄美が描かれているので、わたしなりの解釈を。
そして今年はちょうど「明治維新から150年」にあたることから、この奄美専門チャンネル「南の風」で、7月から【奄美にとって明治150年を問う】シリーズをはじめることのお知らせもいたしました。

★01/NHK大河ドラマ「西郷どん」の歴史的背景

永年、奄美に触れてきた立場の私からして、「西郷どん」でどのように奄美が描かれているのか興味があることです。西郷は計2回、奄美群島に遠島(=島流し)されるのですが、一回目は名前こそ菊池源吾という名を変えますが、藩士としての給料もでていたのです(番組でも西郷のもとに米俵が届いていたと思いますが、あれが藩からの給料でしょう)。しかしもうすぐ始まる二回目の遠島は流人としてであり、沖永良部島では、野ざらしのオリに入れられることになります。

一回目の龍家に寄寓していた時は、ブゲンシャ(本土では言えば豪農の庄屋階級)である龍家の世話になり、その一族の女性であるトゥマ(愛加那)をアンゴ(島妻=薩摩藩士が奄美群島に赴任している期間だけの女性)ではなくトジ(刀自=妻)として迎えます。奄美大島にいた三年間、西郷は薩摩藩の奄美に対する砂糖収奪(=過酷な税収奪)に対して義憤をいだき、シマンチュ側にたって理解を示します(しかし同時に島に到着したての時期に西郷がしたためた手紙には、当時の薩摩藩士が抱いていたであろう奄美への差別表現も書かれていたことも記しておきしょう)。

西郷が義憤を抱いたことは事実なのですが、薩摩藩士たちが、砂糖を隠し持っていたと嫌疑をかけた龍家の当主などを収監して、それに対してトゥマ(愛加那)がシマンチュを率いて代官所を襲撃するという場面はフィクションです。このフィクションの元ネタは奄美群島の徳之島で幕末に起きた百姓騒動である「母間騒動」「犬田布騒動」だと思われます。ふたつの「騒動」に関係したシマンチュはその後厳しい処罰の対象となります。番組ではトゥマ(愛加那)が「闘うシマンチュ」として描かれています。いままで愛加那は小説などで何度か表現対象となってきましたが、こうした愛加那イメージは初めてみます。

さきほどフィクションだと断定した理由を書いておきましょう。龍家の当主を薩摩藩士が収監するのは、幕末の奄美ではまずあり得ないことだからです。というのは、近世の奄美群島は、主に経済的な事由で、農民層に階級分化が進んでいたのです。

それは(1)島役人層(龍家のようなブゲンシャ階級)与人、横目といった役職を担当していました。(2)ジブンチュ(自作農)(3)ヤンチュ(=家人と書く)課せられた納税ができなくなったかあるいは放棄して(1)へ身売りした債務奴隷―となります(幕末の加計呂麻島・諸屯集落のブゲンシャである林家には200人ほどのヤンチュがいたと言われています)。

番組ではこうした農民層の階級分化とそれに伴うシマンチュ間の複雑な心情は盛り込まれませんでした。大河ドラマはドキュメンタリーではなくドラマ(フィクション)なので、そう目くじらをたてることもないでしょうが、動画の持つ影響力の強さも考えなくてはなりません。

「幕末の奄美ではまずあり得ない」というのは、(1)の島役人層は、同じシマンチュでありながら、薩摩と同じ支配者側にある立場であるからです。百姓騒動である「母間騒動」「犬田布騒動」も、シマンチュが抗議した先は、こうした島役人層であったのです(薩摩の奄美支配はシマンチュを直接支配したのではなく島役人層を支配する体制だったので奄美に駐在している薩摩藩士の数は多くなかった)。龍家のような豪農は、決められた砂糖の納税量以外に、藩からの要請があれば砂糖(余計糖)を献納する余力もありました。もちろん島役人層は薩摩の収奪に加担していたばかりではありません。明治初期には島役人層が上国(=鹿児島に行くこと)した際に、砂糖納税額を減額してくれるよう鹿児島県に働きかけています。

★02/7月から「南の風」で〈奄美にとって明治150年を問う〉シリーズを始めます。

今年はくしくも明治維新から150年にあたります。

ちょうど区切りの年に、奄美の150年=奄美の近代とはいったい何だったのかを、さまざまな専門家に語って(歌って)もらう企画〈奄美にとって明治150年を問う〉シリーズを7月から始めます。

以下は南海日日新聞に載った記事(2018.06.06付記事)の転載です。

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◎奄美にとっての明治150年

―7月21日スタート

―神戸市のFMわぃわぃ

明治150年を記念して、神戸市長田区のインターネットラジオ局、FMわぃわぃの奄美専門チャンネル「南の風」は、7月から「奄美にとって明治150年を問う」と題し、シリーズ番組を放送する。初回の放送は7月21日午後5時~同6時。

番組を企画したのは「南の風」パーソナリティーの大橋愛由等さん。「鹿児島県は〝維新勝ち組〟の薩長土肥と連帯していくつかの記念行事を開催しているが、奄美の明治150年はそうした勝ち組の追想とまったく様相が異なる。日本各地にいくつもの150年があっていいのではないか」と語る。

番組は奄美そのものについてと、出身者の阪神における動向に関する語りも含まれているのが特徴だ。

番組は毎月第3土曜日午後5時~同6時。月に1回更新され、放送後はFMYYのこのサイトでいつでも聴くことができる。

出演者と内容予定は次の通り。(敬称略)

▽中井和久(元神戸奄美会会長・奄美市出身)「苦難を乗り越えた出身者の肉声」▽中西雄二(東海大学文学部講師)「神戸を中心とした出身者の集住地域での動向」▽米川宗夫(徳之島出身の唄者)「島唄でたどる明治150年」▽酒井正子(川村学園女子大学名誉教授)「奄美歌謡研究と近代」▽寺尾智史(宮崎大学准教授)「近代国家の標準語政策とマイノリティー言語の相克」▽清眞人(近畿大学元教授・瀬戸内町2世)「南島論で展開された奄美の位相の変化」▽前利潔氏(知名町教委)「無国籍地帯としての〈奄美〉における近代の諸相」