G8レポート1「5万人の市民が多様なデモ行進」(オックスファム山田太雲 )


みなさま、こんにちは。オックスファム・ジャパンの山田です。
今回、G8サミットが行われるドイツから、サミットの様子を貧困問題に取り組む国際NGOの視点から報告させていただくことになりました。今日からできるだけ毎日、情報をアップデートしていきたいと思います。


東京からアムステルダム経由でベルリンまで、約14時間の空路の後、各国のオックスファム関係者が待つロストック近郊のホテルに着いたのは、昨夜12時頃でした。その数日前からあまり睡眠をとれていないことを考えると、今朝は思ったよりもしっかりと目覚めることができました。おそらく、これからクライマックスであるサミット終了までの7日間に起こるであろう出来事に対する期待感と不安感によるものだと思います。

私はここに、オックスファムを代表して、サミットを取材する日本のメディアに皆さんに対して、サミットで何が起こっていることについて私たちが把握している情報を提供し、それが世界で貧困のもとに暮らしている人々の暮らしにどのような影響をもたらすことになるのかを伝えるために来ています。来年のサミットが日本で開催されることになっているため、今からメディアを通じて日本の市民の皆様がこのような情報を知ることはとても重要だと思います。これから1週間、気合を入れてメディア・ワークをしていきたいと思いますが、今日のメインイベントは、なんと言ってもドイツの市民社会が組織した大きなデモンストレーションでしょう。

天気は、残念ながら「デモ日和」とは言いがたく、どんよりと寒く、小雨がぱらついています。にもかかわらず、ロストックの中央駅に集まってくる人の数は膨れ上がる一方。だんだん政治的な熱を帯びてきます。

オックスファムはここで、「スタント」と呼ばれるメディア向けのパフォーマンスをしました。G8首脳の顔に似せた大きなハリボテ(「Big Heads」と言います)を被った8人が、アフリカの代表とギャンブルをするのですが、ここでのミソは、アフリカの人がいくらがんばっても、G8はウラ取引をしたり、よってたかってアフリカの代表から奪ったりして、G8が活用になっていることです。これは私たちが訴えたい、不公正な貿易や債務、そして約束にはほど遠い援助の実態をうまく表していると思いました。

行進そのものは午後1時に出発。聞いたところによると、5万人(主催者発表は8 万人)が参加したそうです。参加者たちが掲げているスローガンは実に多様で、特定の政策についてのものがあれば(例えば「G8は本来南に対して借りがあり、それを返すべきだ[本当の意味で債務を負っているのはG8ではないかと言う主張]」というものや、「すべてのHIV感染者やAIDS患者に治療を」というもの)、もっと全般的なものまで(「G8の皆さん、もう議論はいいから行動を」というものがあるかと思えば、「G8を阻止しよう」というものも)。とても「一貫性のある要求」とは言い難い状況。でも、いろいろな人々が参加するこのデモでは必ずしも要求の内容に一貫性があるかどうかが重要なのではなく、この行動を通じて、全体として、世界中の市民がG8やそれが象徴する仕組みに対して持っている不満の度合いが非常に高いことが誰の目にも明らかになること、そして、G8に対して、「今までどおりに金持ちのためだけの話し合いをするのであれば、あなた方が自負するような国際的な、民主主義の指導者としての信頼は損なわれる」というメッセージが伝わることにあるのだと思います。

残念ながら、一部のグループが破壊活動を行ってしまったために、日本での報道はそちらに注目が集まってしまっているようですが、現場ではいたって落ち着いた受け止められ方をしています。

とにもかくにも、市民社会のメッセージは伝わりました。これに対して、G8がこれまでに世界中の、特に最も貧しい人々に対して交わした約束を守るのかどうか。決めるのは彼らです。