リーフグリーン かわら版

桜の季節に思い出すこと

春、桜の頃になると思いだされる方、Mさんのこと。 Mさんは六甲の高台のアパートに独居の百歳に近い女性でした。骨粗鬆症(こつそしょうしょう)で骨折しほぼ寝たきり。窓から見える樹々や空を眺め過ごされることが多かったのですが、「こうしていても手を合わせ、皆の為に祈ることは出来る。」とご自分の周りの方々の為祈って下さっていました。

 花を愛され、車椅子での散歩で近所の樹や花を眺め楽しまれ、桜の頃には蕾(つぼみ)から散るまで何度も桜ロードを楽しまれていました。ある日、「私のお葬式は桜の咲くころが良い。」と話し始められました。「私は淋しがりだから」沢山の方に来てもらい、一杯泣いて欲しい。参列者の為暖かな晴れた桜の咲くころが良い」と。

 沢山の方を愛し愛されたMさんのお別れの日、前日の雨は止み、八重桜の花吹雪。いつも他人の為に祈っておられたMさんの、ご自分の為のささやかな祈りが届いたのでしょう。Mさんの思い出は春の雨のように私の心を潤してくれます。