フォー89

ストーリー

1998年日本来日長田に来た。
そしてずっと長田。長田には親切おばちゃんがいるから。

フォー89店主の夫はグエン・ヴァン・タンさん。彼はQUANG NINHからの難民として香港経由で1990年日本に来られたそうです。彼の友人の紹介でベトナムのハノイ出身のナン・アンさんと結婚。彼女はハノイから結婚で日本に来てすぐに長田のケミカルシューズの仕事場(この後からゴム屋)で働いたそうです。この頃のゴム屋の仕事は、日本に来る外国人にとって長田での生きる力になったことがわかります。

ナン・アンさんは、日本語が全く話せなかったのですが、ゴム屋の仕事場のおばちゃんたちが、それはそれはやさしくて仕事のこと、そしてそれだけではなく、日本語も日本で生きていくためのいろんなことを教えてくれたそうです。「おばちゃんたち、本当にやさしい。やさしい」と何度も何度もナン・アンさんは私たちに言いました。

夫のグエン・ヴァン・タンさんは名谷の家電量販店で働いていたこともあったそうですが、体を悪くして治療にすごくお金がかかったそうです。しかし二人でゴム屋の仕事を頑張ってお金をため、2019年8月8日に現在の場所に店をオープンしました。「お金はね、友達も助けてくれたよ。でもね。子育てもしながらだったからね。すごーく大変。」というナン・アンさんの言葉は短くて、顔はニコニコ笑っていました。が、言葉もわからない外国で自分の店を持つことの大変さは、反対にズシリと伝わってきました。「すごーく大変だったけど頑張った。2階は防音しているからカラオケもできる。ベトナム人は誕生会やパーティにたくさん人を呼ぶ。その時に予約しているよ」。

ナン・アンさんはベトナムの名前だけでなく浜田アンという名前を持っています。在日コリアンが日本人に差別されないため日本名=通称名を持つことが日本では往々にあります。やっぱり差別されないためかなっ?と思い聞いてみると予想とは違った答えが返ってきました。

「子どもがね、学校に行くようになったの。するといろんな人に名前を教えないダメ。グエンとい名前は私たちには簡単だけど、日本人はわかりにくい、覚えにくい。だから日本人にわかる名前、発音しやすり名前作った」

日本人のために作った、日本人の発音しやすい名前、覚えてやすい名前を作ったという答えは、衝撃でした。ナン・アンさんは名前の本を買ってきて、字画の良い、そして幸せになる、自分たちにもわかる、小学校に上がったばかりの子どもにもわかる日本の名前を作ったそうです。それが「浜田」!でした。

ナンだか涙出てしまいそうになる話でした。

学校からもらってくるいろんな書類の担当は夫のグエン・ヴァン・タンさんが担当、彼は難民としての来日、中学・高校と日本の学校に行き日本語が上手だからだそうです。

長女のグエン・ティエン・ヴィーさんは17歳の高校生、ひろみちゃんという日本名があり、もちろん日本語が堪能ですが、ベトナム語も話せるそうです。

次女グエン・ティエン・NGAさんの日本名はみかちゃん、15歳で中学3年生、三女のグエン・ティエン・ニーさんの日本名はまなみちゃん、12歳の長田中学2年生、長田中学はベトナム人が多いので学校生活には支障はないのですが、残念ながら下の二人はベトナム語が話せないそうです。

フォー89のお店の場所の決め手を聞いたところ、この地域にたくさんのベトナム人が住んでいることと近くに大きな会社や工場があることでした。

2号線の交差点の角にあるので、お客さんが車やバイク、自転車で来ることが多く店の周りにそれらがイッパイになり、近所の人の迷惑になったことが開店当時ありました。そのことで最初はたいへんなこともあったそうですが、それが問題にならずご近所とも良い関係を保っている秘訣、それはナン・アンさんのニコニコ笑顔、やさしい雰囲気でいた。そして近所の人に対してすぐ謝ったり、笑顔で挨拶したり、うるさくしないよう防音をしたり、客専用の駐車場を借りたりの努力の努力の結果が現在のご近所との良好な関係構築に繋がっています。

そしてそれだけではなく「ご近所のおばちゃん、おじちゃんたちとても親切」という彼女の言葉に嘘の匂いがなく、本心の言葉だと信じられることです。ナン・アンさんのこの笑顔、そして「みんな親切」という彼女の言葉の真実が、この地域で生きていく大きな力なんだと実感できました。

店の一押しメニューは、「アヒルの炭火丸焼き」、これにつけるタレが超絶の絶品。日本人の大好きな揚げ春巻きと生春巻きのランチなどランチも人気です。店で働いている女の子は日本語学校の学生アルバイトでしたが、今年から社員にしたそうです。お客さんは日本語学校の留学生・実習生たち、日本にいる留学生にとって、集まってベトナム料理を食べるのはとても大事な時間ですね。食事をしながら日本での生活についていろんな話を聞いてあげることもあるそうです。

今のベトナム人学生たちは昔の自分たちの時代にあったゴム屋の仕事が少なくなり、コロナ禍では学生たちは本当に困っていたそうです。「2回だけだけど。。。」とすまなそうな顔でグエン・ヴァン・タンがその時店の前でやった食糧支援について話してくれました。

「自分も店を出すときにすごく困った。コロナで店もすごく困った。困る人の気持ちはすごくわかる。でも大きなことは自分たちにはできない」こういう困った時にやっぱり自分の言葉で話せる場所があり、少しでも温かい懐かしい食べ物を食べることができたら、人はひと時でも幸せになれるのではないかと思いました。

そういう意味でも長田にいろんな国の店があり、食べ物があり、その国の言葉を話せたり、聞いたりできる場所があることが、この地域の安心なまちづくりに繋がっていくのではないかとしみじみ思いました。

最後にフォー89の名前の由来を聞いてみると、「数字の8と9は縁起が良い。それと日本人も数字だと覚えやすいから」とのこと。このナン・アンさんの納得できるような、できないような、そしていつも「日本人」に対しての視点がある答えに思わず笑顔になってしまいました。【執筆者:金千秋】

おすすめメニュー

アヒルの炭火丸焼き

店の一押しメニューは、「アヒルの炭火丸焼き」、これにつけるタレが超絶の絶品。日本人の大好きな揚げ春巻きと生春巻きのランチなどランチも人気です。

店舗情報
店舗名フォー89
住所〒653-0021 兵庫県神戸市長田区梅ヶ香町2−4−5
TEL/FAX078-682-7388
営業時間11:00-21:00
定休日不定期
ホームページhttps://www.pho89.jp
Facebookhttps://www.facebook.com/Pho89kobe/
取材日2023年

注)店舗情報、メニューなど、すべて取材日時点の情報です。最新の情報は直接店舗にお問い合わせください。

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