なぜ災害が起きる可能性の高い地域に住み続けるのか ~ 阪大フィールドスタディで学んだこと


去る9月1日から7日まで、阪大のフィールドスタディに同行しました。これは、JICA草の根事業の一般向け成果報告の一環として行われています。ジョグジャカルタ周辺とボロブドゥール、ムラピ山の村々を訪ね、災害を経験したコミュニティ、役所、コミュニティラジオの人々とのディスカッションをしました。普段、活動で行っている地域がほとんどですが、ディスカッションでの阪大生の鋭い質問などもあり、私自身も災害とコミュニティに関して、多くを学び、いろいろ考えさせられました。阪大生たちも、この場所でしか経験できないことを経験し、考え方もガラリとかわり、かなりの成果があったようです。徒歩でしか行けない、ムラピ山麓の村にも、スキマンさんの案内で行き、住民と話ができました。


特に印象に残っているのは、これらの地域、とくにムラピ山では、何年かに一度、かならず災害が起きる、または可能性が高いと分かっているのに、なぜ、コミュニティの人々はこの地に住み続けるのかということです。経済的な理由や、先祖代々この土地に住んできたからという答えもありましたが、Lintas Merapi FMのリーダー、スキマンさんの答えに非常に心を打たれました。
 もともと、災害のことを知っていて、この土地に住むことを先祖代々選んでいること。
 災害の危険性があっても、ムラピ山が与えてくれる恵みが大きいこと。
 危険が高いからと引っ越して、引っ越し先のコミュニティに迷惑(仕事が競争になったり)するよりは、ここで、コミュニティ全体で、気持ちよく住むほうを選ぶこと。
 住民たちは安全を求めているのではなく、恵みを与えてくれるムラピ山と、災害も含めて共存し、一緒に生き、ここでコミュニティ全体が気持ちよく生きていくことを望んでいること
 そのためには、災害の危険性と、災害のサインを知り、防災教育を徹底させて、災害時には、自律的に行動できる方法を確立すること。コミュニティが助け合うこと。
なるほどなと思いました。自然との共存、社会の中での共存ということはどういうことなのか、改めて考えさせられました。自然災害から逃げるのではなく、十分な防災の知識を持って、その地の自然と共存し、恐ろしい時もあるけど、普段は豊かな恵みを与えてくれる山に感謝しながら、他のコミュニティに迷惑を掛けず、みんなで豊かに暮らそうという姿勢に敬服しました。Lintas Merapi FMは、彼らが蓄えた防災の知識を他のコミュニティや子どもたちに広く、積極的に伝え、災害時のシェルターを近くの村に建設するのを援助するなどの、まさにスキマンさんが語ったコミュニティを形成する活動を行っています。草根の事業で、このような人々と活動でき、このような理想に少しでも役立っていること、とてもうれしく思いました。
(岡戸香里)