一人ひとりが被災経験を語り継ぐ 〜メラピ山のコミュニティラジオ局でワークショップ〜


ジャワ島メラピ火山の麓に暮らす村人達が、コミュニティラジオ局を通してそれぞれの被災経験を語り継いでいく活動が始まりました。
メラピ山は一定周期で噴火を繰り返し、この十年では2006年と2010年に大噴火が起こり、数百人規模の犠牲者が出ました。メラピ山麓の住民にとっては、火山噴火に対する防災の力をあげていくことは不可欠なことです。防災の知識を専門家から得ることはもちろんですが、村人同士の災害経験から学べることはたくさんあります。噴火時に一人ひとりの村人が「できたこと」「できなかったこと」を改めて振り返ってみて、そこから教訓を掘り起こすことができます。そして、その一人ひとりの物語りを共有し、次の噴火に生かしていこうというのが、被災経験を語る継ぐ活動の目的です。

7月29と30日にケプハルジョ村、8月1日と2日にシドレジョ村で、それぞれ二日間のワークショップを開きました。初めての試みのため、話すことに慣れている村のコミュニティラジオ局で活動している住民達が今回は参加しました。

まずグループに別れて被災体験を語り合って頭の中を整理します。そして一人ひとりが自分の経験を文章に書き起こし、その中から伝えるべき教訓の導き出していきます。それを皆の前で読み上げて参加者全員が被災経験を共有し、感想やコメントを述べ合います。それを踏まえて改善したものを録音してラジオ番組にする、というのが一連の作業の流れです。

村の人達は、文章作りを日常的にそれほどしているわけではありません。「話をすればいろいろでてくるのに、文章にすると頭の中にあることがうまく伝えられない」と、少し苦労しながらの作文でしたが、参加者全員がレポート用紙一杯にぞれぞれの災害経験を書いていました。内容は実に多様なもので、学ぶべき防災の経験がたくさんそこにはありました。

断食月(日の出前から飲まず食わず)のため、いつもよりは省エネでワークショップをすすめ、作文を読み上げて録音するところまでで二日間を終えました。日の入り後の待ちに待った食事をしながらの振り返りの時間の中で、「自分の経験を書き下ろして、声に出して伝えることで、噴火に備えてどんな準備をすればいいのか、改めて思い出すことができた」「火山噴火はつらい経験だったけど、みんなに聞いてもらうことで、それがマイナスばかりではないことに気がついた」「もっと村のいろいろな人の経験を伝えていく必要がある」といった声がいくつもあがり、やる気満々です。

8月中に、BGMや効果音を入れてラジオ番組となります。とても楽しみです。
(日比野純一)