【6月5日 ロストック=松浦哲郎、ラムナス・ブハット】
「ロストック・ショック」と地元紙が伝えたG8に対する大規模な抗議行動は、6月2日の開始から、今日で4日目を迎えました。G8各国の首脳らが集う予定のハイリゲンダムから東へ30分、バルト海に注ぐウンタヴァルノ川に面する港町、ロストックは、多くの抗議活動の拠点となっています。港周辺のイベント会場や、市内の3つのキャンプなどには、ドイツや周辺の国々からリュックサックをかついだ若者たちが多数集っています。
初めての大規模行動が行われた6月2日、私たちは市内で行われたデモンストレーションを取材。行進は2つのグループに分かれて行われ、一方には主催者の発表で6万人、もう一方には2万人の人々が参加しました。思い思いのカラフルな衣装に身を包んだ参加者は、音楽や鳴り物に合わせて、港までの5キロほどの道を楽しく、穏やかに行進しました。
人々の表情が緊張を帯びてきたのは、いよいよ行進も最終地点の
港湾地域に差し掛かったあたりからです。港に通じる道をおびただしい数の警察車両と警察官が取り囲みます。上空ではヘリコプターが旋回。行進の声やイベント会場からの音声が聞き取りにくい状況となり、主催者側から、ヘリコプターを退避されるよう、警察に向かっての要請が何度も続きますが、一向に立ち去る気配をみせません。隊列を組んだ警察官が会場を縦横に駆けながら、行進する人々に徐々に接近します。警察車両がけたたましいサイレンをならして道路を駆け抜けます。装甲車までが登場し、警察の威嚇は激しさを増します。平和な雰囲気に包まれていたデモンストレーションは一気に緊張につつまれ、一方で無政府主義を掲げるブラック・ブロックと呼ばれる、若者たちの集団が勢いを増し、警察の隊列と対峙。警察とのこぜりあいが生じ、ついに無数の石やビンなどが警察の列に投げ込まれる事態となりました。
地元紙は一面にこの「暴動」あるいは「暴徒」、そして投げ込まれた石やビンの写真を掲載、この様子を「ロストック・ショック」と紹介しました。しかし、私の目には、そして、オルタナティブな視点からG8を報道するために、港湾近くに設けられたメディア・センターで取材にあたっている、世界中から集まった 30名ほどの報道陣の目には、今回の事態は、警察の異常なまでの威嚇と、一部の若者を暴徒化させるための巧みな誘導が引き起こしたものであったと映るのです。
抗議行動主催者によると、この日だけで520人の参加者が負傷、うち20人が重傷、180人の警察官が負傷、うち20人が重傷。165人が逮捕されたとのことです。
首脳会議の開催を明日に控えて、夕方にはアメリカ合衆国のブッシュ大統領が到着します。空港を囲んでの大規模な抗議活動など、様々な活動が本日も計画されており、その行方は予断を許さない状況です。