関西学院大学総合政策学部山中速人研究室4年卒業制作第2回


総合政策学部 メディア情報学科 4回生 朝田有香子
タイトル「海外に住むという選択~Melbourne~」

この番組は、自分自身が1か月間メルボルンでインターンシップをすることになり、折角ならばメルボルンに関する番組を作りたいと思ったことがきっかけだ。そしてインターンシップを行う中で、メルボルンで働くたくさんの日本人に出会い、その人たちの生き方にクローズアップした番組を作ることで、こんな生き方があるんだ、という新しい選択肢を視聴者に提供できるのではないかと考えた。
現代では、グローバル化が進み旅行などを通じて海外に行くことは難しいことではなくなったが、海外に長期滞在する又は住むという選択は今も多くの人にとって簡単なものではない。そこで実際私が見たメルボルンの景色や、海外で生活している人のリアルな声を映像を通して届けることで視聴者の心に訴えかけることができるのではないかと思った。もちろん海外で生活することだけが良いのではなく、日本で生活を送ることも素晴らしいことだが、もし海外生活に興味があったり、興味があるけれど何らかの理由で一歩踏み出すことが出来ないという人にこの番組を見てもらうことで、背中を後押し出来るのではないかと考えた。

また今回は番組のタイトルに「選択」という言葉を用いている。私がインタビューを行った2人は、それぞれ「休学」、「仕事を辞める」といった大きな選択をして海外に来ており、それぞれの選択について焦点を当てることで、自分の選んだ道が点と点になって未来に繋がって行くというメッセージを込めている。

番組を作り始める上で、インタビュー対象者は日本人の年の違う男女2名にすることにした。外国の方にインタビューすることも考えたが、日本人に向けた番組を作ろうと考えていた為、日本人に絞ることにした。また、年齢の違う男女2人にインタビューすることで幅広い視聴者の共感を得られるようにした。まず1人目は私がインターンしていた語学学校で働く日本人女性の方に依頼した。職場が同じだった為、依頼するチャンスはたくさんあったが最初にインタビューをお願いした時は、インタビュー等を受けることには慣れていないからという理由で断られてしまった。しかし職場で話をする中で彼女の海外へ来たきっかけや生き方がすごく興味深く、ぜひこの人の話を番組に入れたいと思った為、再度インタビューを依頼しなんとか許可をもらった。その後、仕事の休憩時間を使ってカフェでインタビューを行った。事前に質問内容を伝えていた為、インタビューはスムーズに行うことが出来た。
二人目は、私が働く語学学校に昔通っていた方で、今は留学代理店で働く男子大学生の方にお願いした。彼はメルボルンの留学代理店で働きながらも、週に1度語学学校にボランティアで仕事をしに来ており、そこで一緒に働く機会があった。彼は大学を休学し、メルボルンに来ており、話を聞いていると将来のビジョンがとてもはっきりしていて素晴らしい人材だと思い是非この人に番組に出て欲しいと感じた。彼にはフェイスブックで連絡をし、予定を合わせお互いの仕事が終わった後にインタビューを行ったが、少し夜遅い時間だった為、撮影に適した場所が確保できず、又事前に質問内容を彼に伝えていなかったので考える時間は欲しいとのことで別日に再度行うこととなった。後日、昼頃に待ち合わせ今度はインタビューを行うことに成功した。
二人のインタビューを終え、帰国後、映像を編集し先生に見てもらったが、横に景色が流れる撮り方は視聴者からすると目が回ってしまい良くないとのアドバイスを頂いた。そこでその撮り方の映像は使うのを1度だけに変更することとし、他はカメラを固定した状態で撮った映像をメインで使うことに変更した。又、インタビューの映像をたくさん入れていたが、先生に、インタビューの映像はその人が自分の意見や感想を言っている所だけで良く、その人の仕事の説明は自分がナレーションで説明した方が良いと教えて頂き、ただ単にインタビューで長い時間を取るのではなく、自分のナレーションを入れて番組を構成することにした。

1、 番組全体の文字起こし
ナレーション:皆さんは自分の生き方について真剣に考えたことはありますか?グローバル化、多様化が進んだ現代では様々な生き方、選択肢があります。そんな現代の生き方の1つに「海外に住む」という選択があり、現に多くの人々が自分の生まれ育った国ではない国で生活を送っています。彼らはどんな想いで海外に住むことを決めたのでしょうか?その想いを聞いてみました。

オーストラリア、メルボルン。ここは世界で最も住みやすい都市とも言われるメルボルンです。オーストラリア南東部に位置するこの都市は、ビクトリア州の州都であり、またシドニーに次いで国内で2番目の人口を誇るオーストラリア第二の都市です。そんなメルボルンは、洗練された都市でありながら落ち着いた、ゆったりとした雰囲気を持ち合わせていることから、多くの日本人が海外での生活の場所としてメルボルンを選択します。ところで、皆さんは海外にどれくらいの日本人が住んでいるか知っていますか?現在、海外に住む日本人は年々増え続けており、外務省の統計によると、135万1970人の日本人が海外に住んでいると言われています。135万人と言われてもあまりイメージが湧かないと思いますが、日本国民のうち、100人に1人程度の割合で海外に滞在している人がいるということになります。その中でも、国別の在留邦人数第3位にあたるオーストラリアには、9万7223人の日本人が住んでいると言われています。オーストラリア第二の都市であるメルボルンにも多くの日本人が住んでいることがわかります。また、日本人だけでなく、アジアやヨーロッパ、南アメリカなどたくさんの国の人が共存する都市、メルボルン。そんなメルボルンで出会った2人の日本人の方にお話を伺いました。

レーション:伊藤なつみさん。伊藤さんは約1年前に仕事をやめてオーストラリアにくることを決め、今はメルボルンの語学学校で受付の仕事をしています。受付の仕事内容は幅広く、生徒の質問に対する対応や必要なものの発注、資料作成やデータ入力などたくさんの仕事をこなします。まさに、学校の何でも屋さんとも言える重要な存在です。そんな伊藤さんはなぜ海外にくることを決めたのでしょうか。

質問:海外に行くことを決めたきっかけは何ですか?
伊藤さん:さかのぼることカナダにいた時、大学を卒業してそのまま2年間カナダにワーホリと留学でいたんですけど、そのころから次はオーストラリアに行きたいなっていうアイデアがあって、ただ自分の国でも社会人経験をすることが大事だと思ったので、そこから帰って2年間日本で仕事をして、その2年後にそろそろ行こうかなみたいな感じで来ました。

質問:仕事を辞めて海外に行く決断をすることは難しかったですか?
伊藤さん:就職をする前からしばらく仕事をしてからまたどこかに行きたいなというアイデアがあったので、そこまで難しくはなかった。けど、1回日本で落ち着いて就職して安定した仕事があってそういう日常に入ると突然違うことをしようっていう勇気が少しなくなるっていうのをすごい実感して、でもそのタイミングでちょうど幼馴染もオーストラリアに行こうかみたいな話になってそこで背中を押されたっていうのもあって、そんなに仕事を辞めることに対して葛藤はあんまりなかったですね。

ナレーション:もともと海外経験が豊富だったこともあり、彼女に撮って仕事を辞めて海外に行く決断をすることはそれ程難しいことではなかったようです。ではそんな伊藤さんにこっちに来て1番大変だったことと1番良かったことは何か聞いてみました。

質問:こっちに来て1番大変だったことはなんですか?
伊藤さん:1番大変だったことは、多分私だけじゃなくてここに海外からビザで来ていて長期滞在している人の多くが経験していると思うんですけど、自分の国で出来ることとここで出来ることのギャップの差がすごく激しいこと。例えば自分の国ではすごくキャリアがあるけどこっちではビザの制限もあるし、言葉の壁もあるしそれで出来ることの制限、そのギャップがすごくあることがすごく大変だと思いました。

質問:こっちにきて1番良かったことはなんですか?
伊藤さん:こっちにきて1番良かったことは自分の時間がすごく出来たことです。こっちにきて、日本にいた時よりもすごく心身ともに余裕ができて、新しいスポーツを始めたりとか、もともと好きだったカメラを新しく買ってもっと本格的にやったりとか、もっとアクティブに人に会いにいったりとか。あと、メルボルンはすごく芸術が多い街で音楽もすごく盛んだし、街中すごくアートで溢れてて、私は音楽がすごく好きなのでライブミュージックを見に行ったりとか、そういう楽しみがすごく増えたことが良かったと思います。

ナレーション:海外で生活し働くことの難しさを実感する反面、海外に行く決断をしたことで心身共に余裕が出来たと話す伊藤さん。新しい趣味との出会いや楽しみが増えたことを話す姿はとても生き生きして輝いて見えました。

ナレーション:スーツ姿でパソコンと向き合う男性。彼は大学4年を休学し、今年4月からメルボルンにやって来たながたしょういちさんです。最初の数か月間、現地の語学学校で英語を磨き、今は生徒と語学学校を仲介する留学代理店で働いています。そんな彼にも、海外に行くことを決めたきっかけを聞いてみました。

質問:海外に行くことを決めたきっかけは何ですか?
ながたさん:とにかく今まで英語が大好きで、大学が提供して下さってる英語を勉強するスペースに毎日2年間行き続けて、そこの場所に色んな学科の生徒だったり先生たちが集まってきて一緒に英語を勉強してたんですけど、そこで色んな人に感化されて今まで長期で海外に留学したことがなかったっていうのもあって、あと自分のレベルを確かめたくて出てみたのがきっかけです。

ナレーション:もともと英語が好きで大学3年生から4年生になるタイミングで海外で経験を積むことを決めたながたさん。高い目標を持ってメルボルンにやって来た彼にも大変だったことと来てよかったことは何か聞いてみました。

質問:こっちにきて1番大変だったことは何ですか?
ながたさん:大変だったのは、語学学校に入って最初からアドバンスレベルで勉強させていただいていたんですけど、その時に周りに日本人が全くいなくて、違う国、例えば南アメリカの国の子たちだったりヨーロッパの子たちだったりていう、言語力も言葉のチョイスの仕方もハイレベルな子たちがいる中で、自分が頑張っていく、どうやってそのクラスの中で活躍していくか、っていうところが1番難しかったかなと思います。

質問:こっちにきて1番良かったことは何ですか?
ながたさん:まず日本ではそんなに多くの人たちと関われる機会だったり環境が少ないから、特にオーストラリアのメルボルンは多国籍っていうのにすごい優れていて、こっちにきて全然日本にいたときに関われなかった人達と、オーストラリアで英語を通じてわかりあえているっていうのに気付いた時はものすごく来てよかったなって感じます。

ナレーション:今回インタビューさせて頂いた二人はどちらも、すごく毎日を楽しんでいて、自分のやりたいことは何か、しっかりと自分と向き合っている姿勢が印象的でした。もちろん、「海外に住む」という選択は簡単なものではないし、伊藤さんやながたさんのように「休学」又は「仕事を辞める」などの様々な決断が必要になってくると思います。しかし、海外に出て新しい人や新しい景色に出会うことで、今までの自分の価値観が大きく変わるきっかけになることは間違いありません。選択肢が多い現代社会だからこそ自分がどんな生き方をしたいのか、何を選択するべきなのかわからなくなることは誰にでもあると思います。そんな中で、自分の気持ちと向き合った時、海外での生活に挑戦することも現代の生き方の1つなのではないでしょうか。

2、 考察と反省
まずインタビューを行う中で、自分がこの番組を通して伝えたいことをどういう風に質問に答えてくれる側に説明するかが大変だった。質問を投げかけても、私が欲しい答えではなかったりすることがあり、自分の要望を伝えながらも相手のありのままの言葉で答えてもらえるように誘導することが難しいと感じた。質問内容はインタビュー相手に伝えていたが、どんな番組を作るかどんなメッセージを伝えたいのかを簡単にしか伝えていなかったので、もう少し深く番組の詳細を初めから説明しておくべきだったと思う。
又、番組制作後に気付いた事として、インタビュー対象者に対してもう少し踏み込んだ質問をしても良かったのではないかと思う。当初はシンプルな質問の方がわかりやすくて良いと思った為海外にきたきっかけや、海外にきて良かったことなどオーソドックスな質問しか用意していなかった。しかし、例えば、海外に住むためにはどのような心構えが必要か、や海外と日本の大きな違いは何だと思うか等の幅広い質問も用意しておけばもっと視聴者が関心を持てる番組になったのではないだろうか。全体的な考察としては、番組の中でメルボルンで暮らす人々の映像や街の景色をバランス良く入れることで、メルボルンの魅力を伝えると共に海外に住む日本人の声を届けることが出来た。この番組を通して、視聴者に「海外に住む」という新しい選択肢を提供するというねらいは達成出来たと思う。