「音源ライブラリ「長田今昔物語」」カテゴリーアーカイブ

「長田今昔ものがたり」第61話

第61話 機械サポート工業が支える 2017年9月9日放送

西神戸の産業史が続きます。下請けとか協力工場と呼ばれたりしますが、明治の殖産興業で始まった鉄鋼や車両、航空機、造船からゴム産業に至るまで、独自技術を発展させた「サポート工業」があっての産業化の推進なのです。ガス溶接から技術をみがいた「ヘンミ」は1914年の創業、ガス溶断の「千代田精機」は1946年にできています。わだかんの子どものころを思いだしますと御蔵のあたりに鋳物の「神戸鋳鉄(1916年)」があり、梅ヶ香発祥の「兵神機械」はポンプの修理で、戦災を受け大橋の方へ工場を移し、いまは播磨町です。先輩・友人がサポート企業で活躍したのを自慢できるのです。


61話 サポート工場の切粉(きりこ)

「長田今昔ものがたり」第60話

第60話 淡路狸と須磨狐(閑話休題) 2017年9月2日放送

井上さんがお住まいの須磨には,おとぎ話や伝承が語りつがれています。海むこうの淡路では狸の話が多いです。「芝居小屋に木戸銭を木の葉で作って入った狸、番犬が置かれて寄れなくなる」のですが、お客さんの入りも激減したので結局、狸をお社におまつりします。須磨では「狐」です。「きつね坂」も地名にあります。三味線のお師匠さん、稽古の帰りに天神下まで降りるのですが、行けども行けども帰れない。たばこを一服すると狐は退散したのか、気が付くと「海岸線で、着物は濡れていた……」とか、狐に化かされてという話が多い。2000年になり、その須磨に、なんと「たぬき坂」ができてびっくり。狸と狐の話題は続きます。


60話 きつね坂(2号線より見る)

「長田今昔ものがたり」第59話

第59話 機械工業も多いです。 2017年8月26日放送

川崎重工の車両ビルの横にある2台の「こだま」は、地域のほこりです。インドの首相が工場に訪れたりもします。潜水艦を造る「三菱重工」には、かつて和田岬から高取山まで山岳トレーニングをしていた、加藤文太郎さん(「孤高の人」新田次郎著)も働いていました。運河沿いにある「富士通テン」はカーナビで有名ですが、今は自動車の自動運転の開発にトライしてくれています。かつて、戦時中は戦闘機まで造っていた地域です。技術基盤は十分で、国産航空機生産への貢献も期待したいです。新幹線・潜水艦・高速艇・航空機・自動車など、機械工業がある町にわれわれは住んでいます。


59話 2台のこだま

「長田今昔ものがたり」第58話

第58話 隠れた偉人、浜田篤三郎(その3) 2017年8月19日放送

須磨にも住んだ濱田篤三郎、同じ須磨の住人の井上さんのお話は、「篤三郎と大蔵経」です。濵田氏は44歳で事業家を引退、まずは仏教に関心を持ちます。仏教聖典を集大成したものは「大蔵経」と言い、インド発祥のものが漢訳されていました。東京の芝増上寺に保管されていた国宝経典を読む機会を得て、あやまりを修正し、「大蔵経」の出版もします(平成の再出版は全巻で100万円もしました)。濵田氏はキリスト教にも関心を持たれたそうです。宗教の関係で残るものは、須磨寺の「経塚」で、明治39年に寄贈されたものが見られます。濵田氏の、事業の儲けを社会に還元してゆく姿は、そこかしこにあります。


58話 須磨寺の経塚

「長田今昔ものがたり」第57話

第57話 マッチ工業のおかげです 2017年8月12日放送

マッチは工程も多く、地道に、こつこつの産業です。低コストですから、当初は女性や年少者の労働で、神戸では1877年、監獄でも行われました。1880年に滝川弁三さんが、いまの兵庫区で始められ「日本のマッチ王」と呼ばれるくらい活躍されます。コスト競争のせいで、1920年、西神戸のマッチは衰退します。でも波及効果は多く、ラベルの印刷技術やマッチでの広告技法が定着し、インドや中国、台湾、南米、北米向けに、輸出業も確立できたと考えます。中村マッチは、まだ浜添通6丁目で健在です。北野町の北野工房2階で、昔なつかしいラベルの「防災マッチ」が販売されています。


57話 防災マッチ(ラベルは東洋マッチ)

「長田今昔ものがたり」第56話

第56話 ゴム工業の勃興 2017年8月5日放送

1908年、日本イングラムゴム(ダンロップの前身)が、長田区東尻池で「タイヤの会社」を作ります。英国が本社の外国資本系の会社で、機器・器具類も全部英国製でした。「進取の気風みなぎる」ところだったのです。1906年に運河近くに設立された阪東化学や、1919年にマッチ工場跡を活用した三ツ星ベルトも、布製からゴム製のベルト生産へと、切磋琢磨して技術革新を行いました。マッチ生産の勤勉な労働力と、内外を区別しない「人間対応力」が伝統となり今も残っています。1915年にはカワムラ自転車も創業、この地を去ったあとも、車いす技術で先端をいき、西神戸は「ゆりかごの地」となっています。


56話 ゴム工場の現場