コミュニティ放送の運営から除外される外国籍住民 ~電波法の外国人差別を正す~


 2011年4月1日に運営母体を株式会社から特定非営利活動法人に変えたFMわぃわぃが、在日外国人に差別的な電波法の壁にぶつかりました。
 
FMわぃわぃの始まりは、阪神淡路大震災時に在日コリアンが被災者に震災情報を発信したミニFM局です。その動きに日本人やベトナム人などが合流し、一緒に救援、復興に取り組んできました。

その活動を震災救援時だけでなく、復興のまちづくりの中に位置づけていくために、多くの市民から寄せられた寄付金を資本金にして運営母体「株式会社エフエムわいわい」をつくり、1996年1月にコミュニティ放送の免許を取得しました。

以来、声なき声を社会に伝え、コミュニティの課題解決と異文化間対話の促進に貢献すべく活動を続けてきたのがFMわぃわぃです。

そして昨年、国籍や民族にかかわらず、より多くの市民が参加するだけでなく、オーナーとして支えていくコミュニティ放送局になることを目的に「特定非営利活動法人エフエムわいわい」を設立し、放送免許を「株式会社エフエムわいわい」から承継するため、放送免許を交付する総務省近畿総合通信局への申請を進めました。

外国籍住民は放送局の理事、取締役になれない

 放送局を運営する法人は、1950年に施行された電波法第5条第4項第2号によって、その法人の種別にかかわらず、「外国籍の役員が議決権の5分の1を超えてはならない」「外国籍の役員は業務を執行できない」「議決権を持つ会員(または株主)のうち外国籍の会員(または株主)の比率が20%を超えてはならない」ことになっています。

「特定非営利活動法人エフエムわいわい」は放送を継続していくことの地域社会に対する責任を鑑み、遺憾ながらも電波法に従い、理事8人のうち1人を非常勤の外国籍理事(韓国籍)とし、総会議決権を持つ会員の外国籍比率も20%以下としました。

 ところが、総務省近畿総合通信局の担当者に確認の上で放送免許承継の申請書類をいよいよ提出しようとしたときに、「特定非営利活動法人エフエムわいわいの役員構成では放送免許を交付できない」という連絡が、総務省近畿総合通信局の担当者から入りました。

理由を質すと「非常勤、常勤を問わず、理事はすべて業務執行権を持つことになることが判明した」という説明がなされました。

総務省の本省(霞ヶ関)にも確認をしたところ、業務執行権とは「直接業務を執行していない役員(社外取締役等)であっても、取締役会や役員会において議決権を有している以上、業務を執行する役員に含まれる」というのが公式見解でした。

 これは実質的には、日本の放送局の役員に在日外国人がなれないということです。「公共資源である電波が外国人に奪われない」ことを目的に制定されたこの法律が60年を越えて多文化・多言語コミュニティラジオ局に襲いかかったのです。

法律そのものの矛盾が露呈したことになります。

東日本大震災の災害ラジオ局でも課題浮上

 東日本大震災の被災地では、コミュニティ放送局や急遽立ち上がった十数局の災害ラジオ局が被災者にきめ細かな情報を伝えるとともに、寄り添い、心の癒しとなる放送を続けています。

そして、阪神淡路大震災時のFMわぃわぃと同様に、日本語のわからない外国人被災者に多言語で情報を伝えている放送局もあります。

しかし、一方では、外国人被災者がいるにもかかわらず「重要性が低い」という運営側(自治体)の判断で、外国語放送の時間を別の内容に変えてしまった放送局もあります。

外国人被災者の生の声が、運営側に届いていないため、そういった事態が起こるのです。

定住外国人の参画(所有、運営、参加)は不可欠

「コミュニティ放送とは、声なき声を社会に伝え、コミュニティの課題解決と異文化間対話の促進に貢献するもの」と国連や欧州議会では定義されています。

しかし、日本では商業放送(つまり民放)と同じくくりで、放送法、電波法のもとで運用されています。

多文化で豊かなコミュニティづくりには在日外国人のコミュニティ放送への参画、つまり所有、運営、および参加は不可欠です。

 法やルールはその本来の目的が何であるのかを、時代や状況に応じていつも柔軟に振り返ることが必要です。

もし矛盾があるのなら勇気をもって変えていく謙虚さが必要です。人々や社会が日々成長し進歩しているこの時代の中で恥ずかしくない法やルールであってほしい。

FMわぃわぃは仲間達とともに、その運動に取り組んでいきます。

2011年7月9日
特定非営利活動法人エフエムわいわい 一同